レジデントの活動【〜勉強会などの活動の一部をご紹介〜】

2018 05/29

抄読会

Effects of Spaceflight on Astronaut Brain Structure as Indicated on MRI

N Engl J Med 2017; 377:1746-1753 DOI: 10.1056/NEJMoa1705129

抄読会写真 (1)

宇宙飛行士のMRI上の脳構造に宇宙飛行が与える影響

背景

宇宙飛行が、脳の解剖字的構造と髄液腔に与える影響に関する情報は限られている。

方法

MRIを用いて、宇宙飛行士18例の国際宇宙ステーションへの滞在を含む長期任務の前後の脳画像と、宇宙飛行士16例のスペースシャトル計画への参加を含む短期任務の前後の脳画像を比較した。飛行期間を知らない読影者が画像を読影した。髄液腔の狭小化の程度と脳構造の偏位を評価するため、長期飛行群12例と短期飛行群6例で撮像された高解像度三次元画像をもとに、飛行前と飛行後でペアとするシネMRI画像も作製した。T1強調MRI画像の自動解析を用いて、飛行前後の脳室容積も比較した。事前に規定した主要解析では、中心溝容積の変化,頭頂部の髄液腔容積の変化、脳の垂直偏位に重点をおいた。

結果

長期飛行群(平均飛行期間164.8日)の18例中17例と、短期飛行群(平均飛行期間13.6日)の16例中3例で、中心溝の狭小化が発生した(P <0.001)。サブグル一プ解析では、シネMRI画像で長期飛行群(12例)の全例で脳の上方偏位を認めたが、短期飛行群(6例)では認めず、また長期飛行群(12例)の全例で頭頂部の髄液腔の狭小化 を認めたが、短期飛行群では6例中1例に認めた。長期飛行群の3例は視神経乳頭浮腫を有し、その全例で中心溝の狭小化を認めた。またこの3例のうちの1例のシネMRI画像では、脳の上方偏位を認めた。

結論

宇宙飛行士では、中心溝の狭小化、脳の上方偏位、頭頂部での髄液腔の狭小化が、主に長期飛行群で高頻度に発生した。これらの変化の持続期間と臨床的意義を明らかにするために、飛行後の画像撮影を、地球上で時間をおいて繰り返し行うなど、さらに調査が必要である。(米国航空宇宙局から研究助成を受けた。)